'05 臨床歯科を語る会概要

全体会
インプラント植立本数への疑問

担当:法花堂/松田

   近年誌上を賑わせている症例に目をやるとインプラント補綴を行った症例が増えてきていると感じています。患者サイドの「できれば固定式に」という希望やインプラントが安定した治療経過を得てきたことから欠損補綴の趨勢はインプラントに流れていると言っても過言ではないかもしれません。
   しかしながら術者、患者の双方にとっても「最少の侵襲で最大の効果を」という思いは共通のはずです。そのような視点から再度誌上に目をやると守りたいのは天然歯や咬合(顎位)なのか、反対に植立されたインプラントなのかといった疑問を抱かざるを得ない症例も多々あります。そこで今回は「少ない侵襲で最大の効果」といった観点から一体、何本のインプラントが必要なのかといったことを話題にしてみたいと考えています。


分科会
パーシャルデンチャーの設計を考える

担当:壬生

   インプラントの講習会は数多く行われていますが、パーシャルデンチャーに関する講習会を目にすることはほとんどありません。欠損歯列の術後経過を追ってこられた先生方が多い語る会で、パーシャルデンチャーに対する考え方を学ばない手はないと考え、この企画を立案いたしました。
   近年、インプラントによる固定性補綴が可能になり欠損歯列に対する処置方針は大きく変わりました。しかし、日常臨床ではパーシャルデンチャーの占める割合が圧倒的に多く、その処置方針に悩まされます。それは欠損歯列には多くの複雑な要因が絡みあっており、画一的に進めることができない分野であるからではないかと考えます。  本分科会では鈴木尚先生と黒田昌彦先生をコメンテーターに迎え、若手の症例発表を通じてパーシャルデンチャーの設計の勘所を浮き彫りにしたいと考えております。
ペリオ道場「歯周病症例における診査資料の読み方」

担当:鷹岡

   近年、語る会でもインプラントや再生療法の話題が盛んになりつつあります。しかし若い歯科医師の悩みは、基本的な歯周治療や補綴処置にあるはずです。この分科会では若手を対象に、かつて人気を博した道場を復活させます。
   道場主に千葉英史を迎え、語る会で重視してきたレントゲン写真などの基礎資料から読みとれる歯周病の診断にスポットをあてます。歯周病患者の現状をどう捉え、症例の流れをどう読み、それらを如何に治療方針に結びつけてゆくか、参加者とともに多いに語っていただきたいと考えております。
補綴物咬合面の材質

担当:楡井

   天然歯咬合面は咀嚼、咬合により咬耗し経年的にその形態(接触小面や咬耗小面の数や面積)を変えるとされています。天然歯列の中に装着する補綴物咬合面の材質は単に壊れにくく減りにくいだけでなく、いかに天然歯と調和しその咬合状態を保持していけるかということが重要と考えられます。
   最近は臼歯部咬合面にも患者から白い補綴物を望まれる機会が増えています。それに伴い陶材焼付鋳造冠、オールセラミックス、ハイブリッドレジン、AGCといった補綴物の臼歯部への使用頻度も高まりつつあります。基礎的な研究から、実験的に天然歯を含め各種歯冠修復材を組み合わせた摩耗様相を定性的に把握されてはいますが意外な結果を示すデータもあります。この分科会では天然歯列の中に装着する補綴物を対象とし、基礎的な研究データーと臨床実感の違いをふまえて臨床医がどのような「咬合面の材質」を選択し、どのような配慮が必要なのか話し合えればと考えています。


テーブルクリニック
「あの症例はいま」下川公一先生

担当:須貝

   1987年「デンタルイマジネーション-その技とこころの記録-」という本が出版されました。口腔内写真の美しさ、治療技術のすばらしさに誰もが驚かされ、当時話題の書籍となりました。著者の一人である下川公一先生がその中で紹介した「プロビジョナルレストレーションの臨床への応用について・咬合挙上への対応」の症例を今回取り上げていただきます。処置後20年が経過していますが患者さんはその後転居され現在このパートを担当する私の診療室でメインテナンスを受け順調に経過しています。下川先生に治療のコンセプトやその後の経過、引き継いでおこなった私の治療に対するコメントなど当時の視点と最近の視点を交えながらお話していただきます。
「私の咬合診査法」 菅野博康先生

担当:熊谷

   歯科医療の重要な場面には咬み合せがかかわっています。顎口腔系のバランスが崩れると、歯および歯周組織の咬合力による破壊や、咀嚼関連筋群および顎関節へのメカニカルストレスなどが生じ、咬み合わせ不全症候群の症状を呈することとなります。ある意味で顎口腔系は力との戦いであり、咬み合わせのコントロールが顎口腔系のバランスを保つ大きな役割を果たしていると考えられます。
   ところが、そのコントロールすべき咬み合わせは、いまだに知識の共有化がなされておらず、共通の診査方法も定着していないのが現状です。そこで、咬み合わせに造詣の深い菅野先生に、咬頭嵌合位の評価を基本とした咬合診査法とその応用について、手技を交えながら具体的に語っていただく予定です。
「コンピュータプレゼンテーション作成のTips -Windows編-」 眞田浩一先生

担当:依田

   臨床歯科を語る会 20周年記念企画 「デジタル化時代のケースプレゼンテーションを考える」から早5年、あっという間に、語る会のプレゼンテーションはデジタルに移行してしまった。ほとんどのプレゼンテーションは意趣を凝らした素晴らしいものである。しかし一部に見づらいものや、せっかくの臨床ケースなのにデジタル化によるクオリティーの低下をきたしたと思われるケースが散見される。また、スタディーグループの「一部のマニアックなPCおたくの」先生に負担がかかっているといううわさも聞こえてくる。そこで,今回はコンピュータプレゼン作成の流れと注意をもう一度整理してみたい。最新デジカメの評価、スライドデジタル化のノウハウ、フォトショップでの画像の加工、パワーポイントでのプレゼン作成の注意などについて触れる予定である。


全体会(25周年企画)
歯根膜とセメント質

講演:東京歯科大学 井上孝教授
問題提起:須貝(火曜会)
担当:依田

   組織学的にセメント質は歯周組織の一部に含まれていますが、抜歯すればほとんどのセメント質が歯根側に残り臨床的に歯周組織とはとらえにくいものです。象牙質との境界も肉眼的には不明瞭であり、臨床で扱う組織のなかでもとらえどころのない組織です。しかし根尖性歯周組織炎において破壊された根尖部の回復や歯周治療における付着の再生においてセメント質が重要な役割を果たしていることは知られています。
   最近ではセメント質剥離による急速な歯周疾患の進行やエムドゲインを用いた歯周組織の再生などセメント質が注目されるようになってきています。セメント質とは何なのか? 今回の全体会では臨床の中からセメント質にまつわる話題を集めその存在と機能について再確認してみたいと考えております。

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