2023 新人発表事前抄録



デジタルを活用した低侵襲自家歯牙移植の一症例
中山 伊知郎 (富山剱の会 卒後17年)
【要旨】
 歯を喪失した際の治療法は、欠損状態により「ブリッジ」「義歯」「インプラント」に加え「自家歯牙移植」が挙げられる。ただし、治療方針を決定する上で考慮しなければいけないのは欠損に至る背景(歯牙の喪失理由)、全身疾患、経済的背景に加え、患者の年齢も大変重要である。
 さらに、現在はデジタル化の発展と共に、アナルグの2次元的シミュレーションから3次元的シミュレーションが可能になり、本症例の「自家歯牙移植」に関しては、移植窩の骨形態やドナー歯の形態を知ることはもちろん、C A D /C A Mによりドナー歯のレプリカをデザインすることも可能である。そのレプリカを用いて移植窩を形成することで、移植の鍵である歯根膜の損傷を最小限にしながら移植可能となった。
 本症例は、2022年8月初診、18歳女性で左側第二大臼歯の歯根破折を認めた。春から県外に行くことが決まっており、短期間での治療を希望。このような条件下でどのようにデジタルを活用しながら低侵襲に自家歯牙移植を行ったのか、報告します。

キーワード:【歯牙移植】【デジタル】【レプリカ自家】【低侵襲】【歯根膜】



自家歯牙移植により咬合支持を獲得した一症例
林 直也  (火曜会 卒18年目)
【要旨】
 臼歯部咬合支持の弱体化により残存歯への負担が強まり、さらに、犬歯による支持を失うことで更なる咬合崩壊が進むと考えます。今回、犬歯に矯正的挺出と歯冠長延長術、臼歯部咬合支持の獲得のために自家歯牙移植を行い、咬合再構成を行った症例を発表させていただきます。
 患者は今回初診が2011年、52歳の女性です。上顎前歯部の補綴物の破損を主訴に来院されました。当時の勤務先に過去のレントゲン写真があり、以前からの比較で上顎右側犬歯が縁下カリエスになっているなど、ゆっくりではありますが欠損が進行してきていると考え、治療介入しました。
 歯肉縁下カリエスとなっていました右上犬歯には矯正的挺出ののちに歯冠長延長術、失われていた右側臼歯部咬合支持には自家歯牙移植を行い、患者の希望もあり、固定性のブリッジにて補綴を行いました。現在、移植から約10年が経過し、自身の開業先で経過をみている症例を発表させていただきます。
キーワード:【臼歯部咬合支持】 【歯牙移植】 【犬歯の存在】



左右の対称性を考慮したすれ違い傾向の一症例
山本 大吾(KDM、卒後19年)
【要旨】
 要旨:患者は65歳女性。明るくお話し好きな方。初診は2020年5月。主訴は上の前歯が取れた。
 2017年頃に左下臼歯部、その後右上臼歯部が喪失したとのことであった。全身的既往歴、喫煙はない。
Eichner分類はB3とほぼ臼歯部での咬合支持がなく、このまま欠損が進行すると将来は上顎前歯を失い左右すれ違い咬合になると考えた。 患者は義歯を使用したことがなかったため、歯周基本治療を行い、咬合支持の確立のため、また義歯を受け入れることができるかの確認も含めて治療用義歯を作製することとした。義歯を使用しながらカリエス・根管治療を行なった。カウンセリングを何度か行い失活歯でグレードも低いため挺出した46,47と加圧因子をなくすため26,27の抜歯を行い歯列を改変した。
治療用義歯の形態で機能的にも問題なく経過したため最終義歯を作製した。今後、今回の治療が欠損の流れにどう影響したか経過観察を行い、考察していきたい。
キーワード:【欠損補綴】【歯列の改変】



臼歯部歯列保全に努めた一例
安藤正明(歯考会 卒後20年)
【要旨】
 人生100年時代といわれる現代において、患者のライフステージを見据えて対応することが大切と考えている。特に若年期の治療目標は、欠損進行を招かないよう、出来るだけ最小限の侵襲で天然歯の保存に努めたいと考えている。 一方で歯の喪失は、臼歯部より拡大していく傾向が高く、その結果、前歯部への負担荷重の影響により、欠損拡大の可能性も示唆される。そのため、臼歯部歯列保全に努めることは、欠損拡大を防止するうえで大変重要と考えている。 今回、歯周炎の進行、歯の欠損を伴う若年者の臼歯部咬合崩壊症例に対して、炎症のコントロールに加え、力のコントロールとして咬合支持の強化と矯正治療を行うことで、歯周組織と咬合の安定を図り、臼歯部歯列保全に努めた1例を報告します。


キーワード:【臼歯部咬合崩壊】【若年者】【炎症と力のコントロール】



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