'2020 臨床歯科を語る会概要

全体会 1 (7/4)
「垂直的顎位に問題がある症例への対応 」 

担当:長谷川、筒井

 昨年まで力の問題に焦点を当てて継続企画を行ってきて、一応の答えは見えてきたかと思います。
今年からは新たな継続企画として、「パーシャルデンチャーを再考する」をテーマにしました。
嵌合位崩壊症例において顎位を設定するとき、水平的顎位に関しては GoA などの判断基準がありますが、水平的顎位を模索するにしても垂直的顎位(咬合高径)が定まらないと処置を進めていくことが困難です。
補綴間隙の確保や咬合平面の修正、審美的要求など考慮すべきことが多くあり、顎位決定が困難な症例が欠損補綴の難症例であるとも言えるのではないかと思います。
今年の全体会では垂直的顎位の設定に際し、その診断や手技注意点に関して顎位をどのように設定すればよいのか、また、どのようなリスクを負うことになるのかを症例を集めて検討したいと思います。


全体会 2 (7/5)
40 周年企画 「スタディグループから学んできたこと」

担当:川上、廣瀬

 今年「臨床歯科を語る会」は“不惑”を迎えます。40 年という時の流れの中、臨床の現場では器材・機器や術式などで変革を迫られる分野が少なからずありましたが、「語る会」としての歯科臨床に対する根本的な“考え方”や“思い”はほとんど変わることなくベテランから中堅・若手に受け継がれているように思われます。それは「臨床歯科を語る会」自体がスタディグループ単位で構成されており、そのグループの中で幅広い世代の交流があるからこそ踏襲されているのではないでしょうか。奇しくも昨年の全体会では、黒田昌彦先生が「スタディグループから学ぶ」を演題にご講演され、その意義を教示していただきました。
今全体会ではスタディグループの中で育ち、すでに中堅どころとなって現在のグループを牽引している 40 代 50 代の先生方に絞りまして、「スタディグループから学んできたこと」をテーマに講演していただこうと考えています。それぞれのグループの中で受け継がれている“考え方”や“思い”が浮き彫りになり、ご自分のスタディグループの在り方や臨床姿勢などを見つめ直したり、再認識したりする機会になればと考えています。
  • 熊谷 真一先生(包括歯科医療研究会)
  • 設楽 幸治先生(火曜会)
  • 壬生 秀明先生(救歯会)
  • 境 大助先生(KDM)


分科会
1.欠損歯列における上顎前歯の存在意義

担当:市川、山田、長谷川

 2017 年の全体会「スタディーグループ オープンケースプレ」では、3つのスタディーグループによる欠損補綴の考え方の違いが浮き彫りとなりました。
その中でも、KDM の「上顎歯列の保存、特に上顎前歯を守る」スタンスには賛否両論の声をいただきました。
上顎遊離端欠損症例では、欠損が進行すると上顎前歯にまで危機が迫り、やがて上顎無歯顎に移行する頻度が高くなります。さらに、左右すれ違い傾向の歯列では、上顎前歯を失えば、片顎臼歯残存の厳しい偏在に陥る傾向が認められます。
一方、平成 30 年の永久歯抜歯原因調査においては、下顎前歯は他の歯牙と比較して残存する傾向が認められ、対向する上顎前歯が保存できれば、咀嚼効率や顎位の安定に有利な状況になります。よって、欠損が中盤に差しかかった場面では、上顎前歯を守ることは難しいことながら、最も大きな意義があると考えています。
そこで欠損補綴において上顎前歯の弱体化した症例を集めて、どのような経過を辿るのか、上顎前歯を守る必要があるのか、ディスカッションできればと思います。
2.歯周病患者における矯正治療

担当:斎田、名村、三箇

 重度歯周病患者においては、病的歯牙移動(PTM)により歯列さらには咬合平面、咬合高径に異常を来している症例が少なくありません。炎症のコントロールの後に、口腔機能回復治療としての矯正治療は様々な点で必要性が高い場面は出てきます。しかし、矯正専門医は歯周病患者の矯正治療は避ける傾向にあるとも言われ、このような場面は一般歯科医の出番とも言えます。
矯正の経験が少ない先生にとっては、ハードルの高い処置でもありますが、本分科会ではそのような先生方にとっても、経験豊富な先生方にとっても有意義な会になるよう、基本的な全顎矯正のポイントをまとめたのち、会員の先生方から歯周病患者における矯正治療の症例を提示していただき、その必要性、矯正開始のタイミング、移動方法、固定源確保の方法、矯正治療後の対応、などさまざまな疑問について、参加される先生方と考えていければと思います。
3.歯科技工の現状と未来

担当:筒井、村井、野地

 最近、若手の会員から「欠損歯列でテレスコープの症例があるのですが、どこの技工所に出せばいいですか?」そんな相談を受けることがあります。
インプラントやセラミックを専門とする大型のラボは沢山ありますが、私達がこだわってきた義歯やインレー、クラウンの適合などをしっかり追求した補綴物を製作してくれるラボは年々減少しているように感じています。 将来的なことを考えると、テレスコープなどを製作してくれるラボは消滅してしまうかもしれなせん。
歯科技工士さんから話を伺うと、平成 3 年には約 3 千人であった国家試験合格者が2019年度は約800人まで減少し、そのうち約8割が離職するといった現状ということです。その原因としては・長時間労働 ・低賃金 ・仕事のマンネリ化などがあるそうで、地方になればなるほどその状況は深刻化しているそうです。
今回の企画はそういった歯科技工士問題を我々歯科医師と共有したうえで、若い歯科技工士の教育の現状や、院内ラボのメリットやデメリット、これから主流となってくるであろう CAD/CAM システムなどについて一緒に考えていきたいと思います。
私たち歯科医師とそのパートナーである歯科技工士がより良い仕事を行っていくためにどのようなことが必要なのかをざっくばらんに話し合う場にしたいと考えています。


ポスターセッション

担当:市川、野地

 例年恒例となりましたポスター発表企画。今シーズンも全体会会場での発表を予定しております。昨シーズンは終了時刻を過ぎてもディスカッションが行われる程の盛況となりました。ポスター発表は発表中も前の部分を見る事ができたり、ポスターの近くに寄って画像を細かく見る事ができるといったオーラルプレゼンテーションにはない話題展開の可能性を秘めています。是非「臨床歯科を語る会のポスター発表」に御参加下さい。
  • 蒲沢 文克先生(札臨研)
  • 江尻 健一郎先生(火曜会)
  • 永森 太一先生(剣の会)
  • 秋山 俊治先生(救歯会)


夜の部屋
7月3日(金) 若手症例相談の部屋 コメンテーター:須貝 昭弘先生(火曜会)

担当:山田

 金曜の夜の企画として定着しつつある「若手症例相談の部屋」を、今年も開催します。若手の先生方は、臨床のいろいろな局面で悩み、その中で決断をし治療を終えたものの、自身の臨床判断の是非に悩んだり予後を心配することも多いかと思います。あるいは、自信を持って完了した治療も、ベテランの先生からの違う視点からの指摘にはっとすることもあるものです。今年は火曜会の須貝昭弘先生にコメンテーターをお願いしました。幅広い臨床分野に深い慧眼をお持ちの須貝先生に、じっくり症例を見ていただき、アドバイスをいただけることは、語る会夜の部ならではの機会だと思います。
相談したい症例がある先生は実行委員までご連絡ください。

担当:川上

 好評を博しています“道場”を今年も開催します。昨年大盛況でした「永田オクルージョン道場」に引き続き、今回は富山剱の会の牧野明先生を道場主にお迎えし、若手の先生を対象にした企画を考えています。
歯周治療は歯科臨床の基礎となる分野です。歯周基本治療の意義や威力を世に知らしめた道場主ですが、のみならず歯周外科や歯周組織再生療法も必要に応じて積極的に取り組まれ、引き出しの多い診療スタイルをとっておられます。
今回は歯周治療に悩む若手から症例を提示していただき、口腔所見をどのように読み取って、どうアプローチしていくのか、歯の保存から機能回復まで参考症例なども提示して解説していただきたいと考えています。悩んでいる歯周病症例をお持ちの若手の先生は、ぜひ実行委員までご相談下さい。

担当:斎田、名村

 昨年、夜の企画でコーヌステレスコープ義歯〜各製作法のメリット・デメリット〜を取り上げました。なかなか学ぶ機会が少ない義歯製作の具体的な話まで、歯科技工士も交えてディスカッションすることができ、非常に有意義な会でした。
今年は第2弾として、パーシャルデンチャーの直し方について、同じく夜の企画として特集したいと思います。可撤性補綴物の最大のメリットは、修理可能であることと言えます。コーヌステレスコープ義歯に限らず、義歯は直し方を知らないと作れないと言われます。修理可能なのが義歯の大きなメリットでありながら、その方法についてはあまり取り上げられることはありません。様々な修理の方法を数名の演者から提示していただき、それらの方法を共有するとともに、さらには歯科技工士、ベテランからも様々なアイデア・意見を引き出せればと考えています。