2022 新人発表事前抄録



予後不安歯の保存に取り組んだ症例
奥平 章人(救歯会 卒後11年)
【患者概要】
患者:60歳 男性

【要旨】
 患者さんは60歳の男性で、主訴は右上1番がコアごと脱離したことでした。歯科恐怖症により約10年間歯科受診できず、奥様からのご紹介で来院されました。
 初診時、口腔内には左上の残根など保存の厳しい歯を多数認め、臼歯部咬合支持は失われていました。そこで極力歯の保存に努め、臼歯部の咬合再建を行うことで欠損の進行を少しでも抑えたいと考え治療に取り組みました。
 症例を振り返ると、稚拙な基本手技や治療計画など、反省する点も多くありました。しかし、患者さんの熱心なメンテナンス受診にも助けられ、現在のところ大きなトラブルもなく経過しています。
 臨床歯科を語る会という場で発表させていただくにはお恥ずかしい治療経過ではありますが、できるかぎり歯を救いたいという思いで取り組んだ症例になります。
よろしくお願い致します。

キーワード:【歯肉縁下カリエス】【矯正的挺出】【咬合再建】



個別性を考慮した上顎欠損先行症例
岡野 耕大(オカノコウタ)  (なんかよう会 卒16年目)
【患者概要】
患者:46歳、女性
初診:2019年1月
主訴:上顎前歯の動揺

【要旨】
 患者は2019.01初診の46歳女性で上顎前歯の動揺を主訴に来院されました。
年齢と比較して骨吸収が進行し、残存歯には動揺が認められる罹患度が高い歯周病でした。一方で喫煙歴、全身疾患はなく、年齢も若いことから、回復力も高い治りやすい歯周病ではないかと推測し、治療を始めました。
 咬合支持歯が弱体化しており、欠損拡大リスクを孕んだ残存歯配置でしたが、テンポラリーの動態から個別性を模索し補綴設計を検討しました。
 歯周基本治療から歯周病の回復力の高さを、テンポラリーの経過から咬合力の弱さを判断したため、リスクの高さを憂慮しつつも連結方法と連結範囲を決定しました。
 初診から4年、治療終了後2年程度ですが、術後は大きなトラブルなく推移しています。患者は年齢も若く、再介入の時期を遅らせるためにメインテナンスの大切さをお伝えしています。
キーワード:【歯周病回復力】 【個別性】 【連結固定】



はじめてのコーヌス症例を振り返る
佐野 瑞樹(NDの会、卒後12年)
【患者概要】
患者:52歳 女性 ケアマネージャー
初診日:2015年11月
主訴:歯がぐらついて咬めるところがない

【要旨】
 患者は歯がぐらついて咬めるところがないとの主訴で来院された。ホープレスの歯牙を抜歯したのち、歯周基本治療を進めながら義歯に残存歯を取り込んでいった。全体的に歯周組織の改善を認めたが、遊離端欠損を抱える左下には歯牙の動揺が残ったため智歯の移植を行い受圧条件の改善を図った。
 補綴設計では弱体化した歯牙を保護しつつ機能させるために二次固定を選択し、プロビジョナル義歯を用いて咬合の安定や歯牙への負担過重などを確認したのちコーヌス義歯を作製した。

【まとめ】
  • 少数歯残存症例において、脆弱な残存歯を利用できる二次固定タイプの義歯は有効であることを実感した。
  • 治療計画の策定にあたっては患者の病態だけでなく術者の能力や医院のシステム等も重要なファクターであることを痛感した。
  • 術後対応を適切に行うためにも、メインテナンスを継続し慎重に観察していきたい。
キーワード:【少数歯残存】【二次固定】【自家歯牙移植】



片側性設計で対応した下顎犬歯欠損症例
若松 尚吾 (火曜会 卒後19年)
【患者概要】
患者:女性 事務職
初診日:2016年11月
歯式:

【要旨】
 元は私が勤務していた医院の患者さんで、開業後は、以前私が作製した左上義歯の調整でのみ来院していました。旧院でメインテナンスおよび右下の義歯を再製していましたが、右下3が歯根破折をしており、右下8も歯根破折を疑う状態でした。もし右下3を失うと長い遊離端欠損の直接支台歯が支持組織量の少ない右下2となるため、義歯の安定が難しくなることを説明し、当院にて全顎的治療を開始しました。
 患者さんは77歳の女性、改変しなければ右下3、8を失ったのちに左右的すれ違い咬合が進み、咬合支持を安定させることが難しいであろうと考え、抜歯と同時に移植とインプラントによる欠損歯列の改変処置を行いました。その後、下顎前歯MTMによる環境改善後、テレスコープ義歯による二次固定を行いました。 現在最終補綴物を入れて約3年となりますが、大きな問題は生じていません。上顎義歯も経過のなかでトラブルがあり、再製を行いましたが、今回の発表では特に下顎の治療について提示させていただきます。

キーワード:【欠損改変】【MTM】【二次固定】



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