宮園 香樹(秀志会、卒後12年目)
【要旨】
症例:患者 T.K. 男性 会社員
初診:2005年9月
歯式:
初診時年齢:35(born in 1970)
主訴:前歯の虫歯が気になる 全身疾患等の特記事項なし
少数歯欠損症例においては、ブリッジ、インプラント、歯牙移植、義歯等さまざまな治療のオプションが考えられる。近年、予知性という観点から、インプラントを少数歯欠損の第一選択とする考えも雑誌等でよく目にするが、あくまでも患者一人一人に対し個別に最善の対応をすることが重要であることは論を待たない。
本症例では、保存困難なカリエスによって大臼歯が4歯欠損する患者において、4本存在する智歯をそれぞれに移植することでいわゆるアイヒナーA1の歯列を再建しました。
抜歯後時間が経って顎堤が細くなってしまった左下6部への移植は、顎堤の幅がある遠心寄りに移植することで対応しましたが、今であれば顎堤拡大術を行って理想的なポジションに移植したと思います。
左上7の近心傾斜が強いため、移植するスペースがなかった左上6部への移植は、左上7のアップライトを行なってスペースを作り移植を行いました。
今後、移植歯のアンキローシス等の術後トラブルも考えられ、最善の対応とは言えない治療とは思いますが、術後経過を慎重に見つめながら自分なりの移植の適応をクリアにしていきたいと思います。
諸先生方のご意見やご指導をいただけますようよろしくお願い致します。
【結論】
少数歯欠損においては、インプラント、移植、ブリッジ、義歯等さまざまな治療のオプションが考えられる。臨床においては、移植が可能な場合に移植とインプラントとどちらを選択するのか?と迷う場面によく遭遇する。
予知性を考えインプラントを第一選択とする考えと、歯牙本来の機能を保存するという観点から移植を第一選択とする考えがあるように思える。
本症例の術後経過を見つめることにより、この疑問を解決する一助を得たいと考えている。