'07 新人発表事前抄録



可撤性義歯で対応した1症例
A case who corresponds with removable denture
牧 宏佳(包括歯科医療研究会、卒後7年目)

【要旨】
患者: 60歳 男性 職業:会社役員
初診:2005年11月
歯式:
主訴:歯石を取りたい
特記事項:特になし
 初診時、臼歯部に欠損が認められ最遠心部の歯牙には動揺が認められました。以前に可撤性義歯を作製した既往がありましたが、違和感が強いとのことで全く使用していませんでした。最近になり動揺が大きくなり徐々に噛みにくくなったとの訴えもありましたので臼歯部に補綴処置を行いました。その際に患者の既往歴、口腔内の現症や特徴、患者の要望などを考慮して、可撤性義歯を作製しました。

診査・診断・治療計画・治療過程の一連の内容を発表させていただき、諸先生方のご指導を承りたいと思います。

【反省・結論】
  • 以前は義歯を受け入れてもらえなかったが、義歯形態を模索することにより義歯を許容してくれるようになった。
  • 下顎の義歯は欠損数が少ないわりに義歯形態が大きくなってしまった。
  • 今後、直接支台装置の歯牙や義歯粘膜面の適合などに注意しながら経過観察を行っていきたいと考えています。
キーワード:【個別対応】【義歯設計】【歯根膜量】 


自家歯牙移植により咬合崩壊を予防した一症例
A Case report; Four times transplantation in one patient to prevent
宮園 香樹(秀志会、卒後12年目)

【要旨】
症例:患者 T.K. 男性 会社員
初診:2005年9月
歯式:
初診時年齢:35(born in 1970)
主訴:前歯の虫歯が気になる 全身疾患等の特記事項なし  
 少数歯欠損症例においては、ブリッジ、インプラント、歯牙移植、義歯等さまざまな治療のオプションが考えられる。近年、予知性という観点から、インプラントを少数歯欠損の第一選択とする考えも雑誌等でよく目にするが、あくまでも患者一人一人に対し個別に最善の対応をすることが重要であることは論を待たない。

 本症例では、保存困難なカリエスによって大臼歯が4歯欠損する患者において、4本存在する智歯をそれぞれに移植することでいわゆるアイヒナーA1の歯列を再建しました。
抜歯後時間が経って顎堤が細くなってしまった左下6部への移植は、顎堤の幅がある遠心寄りに移植することで対応しましたが、今であれば顎堤拡大術を行って理想的なポジションに移植したと思います。
左上7の近心傾斜が強いため、移植するスペースがなかった左上6部への移植は、左上7のアップライトを行なってスペースを作り移植を行いました。

今後、移植歯のアンキローシス等の術後トラブルも考えられ、最善の対応とは言えない治療とは思いますが、術後経過を慎重に見つめながら自分なりの移植の適応をクリアにしていきたいと思います。

諸先生方のご意見やご指導をいただけますようよろしくお願い致します。

【結論】
少数歯欠損においては、インプラント、移植、ブリッジ、義歯等さまざまな治療のオプションが考えられる。臨床においては、移植が可能な場合に移植とインプラントとどちらを選択するのか?と迷う場面によく遭遇する。

予知性を考えインプラントを第一選択とする考えと、歯牙本来の機能を保存するという観点から移植を第一選択とする考えがあるように思える。

本症例の術後経過を見つめることにより、この疑問を解決する一助を得たいと考えている。
キーワード:【自家歯牙移植】【治療計画】 


全顎的に根尖性歯周炎と歯肉縁下カリエスに罹患した症例
The application of periodontal plastic surgery in the treatment of a case with generalized subgingival caries
篠田 純 (救歯会所属、卒後13年)

【要旨】
初診時歯式:

症例の特徴:
 ・歯肉縁下カリエス
 ・根尖性歯周炎
 ・Seibert Class V の顎堤欠損

【処置内容】
 初期治療:TBI・SC・テンポラリークラウン装着・根管治療
 再評価
 歯周外科治療:クラウンレングスニング・リッジオーグメンテイション
 補綴治療:クラウン・ブリッジによる補綴
 メインテナンス

 歯肉縁下に及ぶカリエスが存在する歯牙を補綴する場合、生物学的幅径・補綴物の維持を得るため補綴前処置として矯正的挺出、外科的挺出、クラウンレングスニングなどが行われます。今回の症例では、歯肉縁下カリエスが全顎に及んでいたためクラウンレングスニングを選択しました。また顎堤の欠損部においてはRidge augmentation も試みています。

【結論】
 短い経過観察の範囲ではありますが、プラークコントロールの改善が見られ、歯周外科を行った部位の歯肉も安定しています。
キーワード:【根管治療】【クラウンレングスニング】【リッジオーグメンテイション】


力の分散を考慮した欠損補綴の1症例
A case report of prosthetic treatment with consideration of force distribution
加藤 拓(新潟月穂の会、卒後13年目)

【要旨】
患者:52才女性、会社員
初診:2003年10月
主訴:上顎前歯、小臼歯の動揺
歯式:
   残存歯数18→17 咬合支持数6→5 Eichner B2
 臼歯部咬合支持の不足は、残存歯への荷重集中から歯周病の悪化、歯根破折、顎位の変化等の誘因となります。本症例も咬合支持の不足から、上顎の前歯、小臼歯に中等度の歯周炎と右上1番に歯根破折が認めらました。咬合支持獲得として、力の分散と上下顎のバランスとを考慮し、下顎左側遊離端部はインプラント、右側中間欠損部はコーヌスブリッジ、上顎はフルブリッジによる補綴設計を念頭に置きながら治療を行っていきました。
 歯周初期治療を行いつつ、上顎残存歯をテンポラリーに置き換えて連結固定をしていきました。連結後、縁下ポケットの除去と縁上健全歯質の獲得のため歯周外科治療を行い、プロビジョナルで咬合を確認した後、最終補綴に移行しました。最終補綴後2年弱という短い期間ですが、上顎支台歯の支持組織は安定していると思われます。

【まとめ】
・確実な咬合支持の獲得と歯周治療により歯周組織の改善を図れたと思います。
・縁上健全歯質を獲得することで歯根破折のリスクを低減できたと考えています。
・フルブリッジは力の分散には有効だったのではないかと考えています。
キーワード:【咬合支持】【補綴設計】【歯周外科】 


上顎臼歯欠損症例の補綴設計
Prosthetic design for the case with defects of upper molar teeth
加藤 英敏(NDの会、卒後15年目)

【要旨】
患者: 59歳 男性
初診:2002年2月
歯式:
主訴:義歯新製希望
特記事項:特になし
 上顎臼歯が欠損し、下顎に加圧要素となる多くの歯牙が残存している症例の場合、タイプA義歯とした方が比較的予後が良いとされていますが、今回私も同じような症例を経験しましたので発表させていただきます。

 初診時患者の上顎には、不適合なクラスプデンチャーが装着されており、全顎にわたり7〜9mm程度の歯周ポケットが存在しました。上下顎の残存歯の歯冠歯根比が悪く、全顎的に動揺がT.U度ありました。

 初期治療後、上下顎にクラスプデンチャーを作製し、経過を見ていましたが、上顎前歯部の動揺が増し、T-Fix等の処置後も改善しなかったため、義歯の設計を変更しました。上顎は、321|123を抜髄後コーヌスデンチャーの支台としタイプA義歯を作製、その後下顎はクラスプデンチャーを装着しました。

【結論】
  1. 321|123を抜髄しコーヌス義歯にした事により、歯冠歯根比を改善でき、二次固定効果により歯牙の過重負担を軽減できたと考えられます。
  2. タイプA義歯にした事により、上顎前歯部の骨に改善傾向が見られますが、遊離端に近接する3|3に歯根膜の拡大が見られますので、上顎大臼歯部に咬合支持となりうる歯牙移植や、インプラントの使用も視野にいれ慎重に経過観察を続けたいと思います。
キーワード:【タイプA義歯】【歯冠歯根比】【二次固定】 


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