'12 新人発表事前抄録


大臼歯部偏在の改変を試みた症例
A case tried modification of the partially eduntulous form in the MI
中村貴則(火曜会・卒後7年)

【患者概要】
患者: 57歳 女性
初診:2009年10月
主訴:ブリッジが外れた
特記事項:真面目 非喫煙者 義歯を嫌悪
歯式:

【要旨】
 今回は偏在傾向がある欠損歯列に対し、1本の移植歯とインプラントを用いて欠損形態を改善しようと試みた症例を発表させていただきたいと思います。
 患者は57歳女性、主訴はブリッジが外れたと来院。右上5番が生活歯で破折していました。右上左下臼歯部は破折・抜歯により徐々に咬合支持を失っていったようです。
初診の状態は、臼歯部は処置菌が多く、大臼歯部はすれ違っている状態でした。しかし、前歯部は多少治療はされているものの天然歯に近い状態でした。
治療方針は、前歯部を守るため臼歯部に咬合支持を追加し、欠損形態の改善をして欠損の進行を防ごうと考えました。欠損部に対し上顎には自家歯牙移植、下顎にはインプラントを埋入し、最小の侵襲で最後方の咬合支持を獲得し、経過を見つつ治療を進めて参りました。患者の「絶対に義歯は嫌」などの要求も有り、機能・見た目ともに違和感が少ない補綴を心がけました。
 まだ補綴してから短い経過ですが、症例の見方、処置方針や手枝などご指導を頂けたらと思っております。なにとぞ宜しくお願いいたします。

【まとめ】
  1. 移植歯、インプラントにより大臼歯に咬合支持を得ることが出来ました。
  2. 欠損の進行を防いでくれるのではないかと期待しています。
  3. 処置が適切であったのか、今後も注意深い観察が必要だと感じています。


キーワード:【臼歯部咬合支持】 【自家歯牙移植】【インプラント】


下顎少数歯残存にテレスコープで対応した1症例
A case of telescopic denture accepted a few remaining teeth in lower jaw
境 太助(KDM・卒後10年)

【患者概要】
患者: 72歳 女性
初診:2008年7月
主訴:入れ歯を新しく作りたい
特記事項:顎位の低下
歯式:

【要旨】
 患者さんは72歳女性で、2008年7月に義歯新製希望で来院されました。
以前は義歯は痛くて咬みづらかったということでした。
上下の歯数のバランスが悪く、インプラントなどによる欠損歯列の改変も考えましたが、年齢も考慮し、まずは改変なしで治療用義歯を作成しました。
強い加圧因子となっている右上67は、できれば7だけでも抜歯をしたいと考えましたが、なるべく歯を保存したいという患者さんの同意を得ることが困難でした。
テレスコープタイプの治療用義歯にしたところ、義歯の胴体は安定してきました。
補綴間隙の不足のため、前歯で3mmほどの挙上を行いました。咬合力が小さいと判断したためです。付着の量が少なかった右下1は内冠の高さを低くしています。

【結論】
 下顎の残存歯は、付着の喪失も起こっており単独でクラスプデンチャーの鉤歯とするには不向きであると判断しました。そこで残存歯すべてに支持を持たせる、ワンユニットのテレスコープデンチャーを計画しました。
 下顎前歯をすべて喪失すると下顎のシングルデンチャーとなり、臼歯部顎堤の状態からも、難病例になることが予想されます。テレスコープの支台歯は清掃性に優れており、辺縁歯肉も解放できることから、下顎前歯を長期的に保存するためには有効であると考えました。
 患者さんの年齢と治療用義歯の経過からインプラントを用いない設計としましたが、術後約3年と短い経過においては、今のところ大きな問題は起きていません。
当初は右上7、できれば6も抜歯を行い短縮歯列にする加圧因子を減らすことができると考えました。しかし、抜歯後移植に使用できる可能性などの見返りがなければ、抜歯に対して高齢の患者さんの同意をスムーズに得ることは困難であると実感しました。


キーワード:【下顎少数歯残存】【テレスコープ】



犬歯の保存に務めた努めた症例
Positive preservation of the maxillary canaine
増田拓也(しんせん組・卒後12年)

【患者概要】
患者: 63歳 男性
初診:2011年1月
主訴:前歯がボロボロなので何とかして欲しい
歯式:

【要旨】
 患者は前歯のカリエス治療を主訴に来院した。
上顎のカリエスがひどく、右上5番、3番、2番、左上5番、7番、左下5番は残根状態であった。左上7番、左下5番は保存が不可能なため抜歯した。利用できる歯根の長さのある右上3番、5番、左上5番は矯正的挺出を行い保存を試みた。歯周外科後、フェルールが獲得できたことを確認した。当初は動揺があったためテックの連結を行い、経過を観察した。その後、動揺が落ち着いたため、最小限の連結にとどめたプロビジョナルに交換し、さらに経過観察を行った。
プロビジョナルの脱離、セメントのウォッシュアウトがなく、単冠にしたことによる動揺も認められないため、最終補綴を行った。

【結論】
・残根状態の歯牙は矯正的挺出により保存することができた。
・犬歯の保存により、シンプルな形で仕上げることができた。
キーワード:【矯正的挺出】【犬歯】 



再制作したコーヌスクローネ義歯の症例
A Case of konuskrone trying for Simple design
菊川郁雄(救歯会・卒後20年)

【患者概要】
患者: 70歳 女性
初診:2006年3月
主訴:壊れない義歯を作って欲しい
特記事項:全身疾患なし 喫煙歴なし 歯式:Eichner B4 残存歯数15歯

【要旨】
 本患者は全身疾患もなく喫煙歴もないカリエスタイプの方です。5年前に上顎金属床義歯を装着しましたが、義歯前歯の度重なる破損と下顎粘膜部の痛みからコーヌスクローネ義歯による再治療をすることになりました。
 まず右上7番を頬側根と口蓋根に分割し、口蓋根を左下5番部、頬側2根を6番部に移植して受圧加圧条件の改善をおこないました。そして咬合挙上の上、旧補綴物を外してコーヌスタイプのテンポラリー義歯に置き換えていきましたが途中テンポラリー義歯がたびたび破損、試適で合わないなど数々のトラブルに見舞われました。そして何とか1回目のコーヌスクローネ義歯を装着いたしましたが下顎が締め付けられると訴えられ下顎義歯はまったく使用してもらえず上顎は新義歯、下顎はテンポラリー義歯のまましようしていただくことになりました。。
 上顎コーヌスクローネ義歯セット後2年、度重なる下顎テンポラリー義歯破損のため下顎の新義歯を作製することになりました。一度作った下顎義歯のパーツはほんの一部しか使用できずほとんど作りなおしになりましたが、今度は2回目の義歯を装着できました。

【結論】
 1回目の義歯が患者さんに使って頂けずに費用を返却することになりました。
その2年後には2回目の義歯を制作して、今度は使って頂けるようになりました。その経験から、反省すべきこと、考察できることを申し上げたいと思います。


キーワード:【コーヌスクローネ義歯】【制作過程】【トラブル】 

欠損歯列における4犬歯残存の優位性
The advantage of 4 canine teeth remaining with no posterior occlusal support
中島幹夫(無門塾・卒後17年)

【患者概要】
患者: 70歳 女性
初診:2007年4月
主訴:右上が腫れた 全体を直したい
歯式:

【要旨】
 患者は70歳の男性で、右上の歯肉腫脹を主訴に来院されました。
主訴の右上5はホープレスで即日抜歯となりました。口腔内全体に歯石があり、残根、欠損は放置したままでした。全顎的な治療も希望されたので、まずは若干咬合挙上した治療義歯作製をしました。今まで義歯を入れたことはありませんでしたが、義歯の受け入れはよく、また左右の犬歯のみの咬合接触しか無かったにも関わらず、タッピングポイントは非常に安定しておりました。
 歯周基本治療の後、咬合平面の修正を行い、義歯を作りなおして経過観察をしました。ところがエナメル質の保存を意識しすぎ、必要と思われる切削を怠ったためにカリエスや咬耗の原因になってしまいました。その後再度カリエス、レスとシート付与等の治療を行い、義歯を作りなおして、良好に現在に至っております。

【結論】
 犬歯が4本とも残存しており、かつ良好な咬合状態をたもっていることは、顎位の安定及び補綴設計に非常に有利であると感じました。
カリエス、欠損等の局所的要因だけでなく、口腔内全体、患者個人の要素も考えながら治療を行うことが重要であると反省しました。


キーワード:【犬歯の残存】【咬合支持】


 - 戻る -