患者の言葉に左右された一症例
小林豊明(6年目 一の会) |
【患者概要】
患者: 70歳 男性
初診:2011年9月
主訴:上下義歯の調子が悪い
【要旨】
1998年に押見歯科診療室初診、2001年に代診が上顎にコーヌスデンチャーをセットした患者さんです。その後定期的なリコールは行われず、どこか痛いところがあると来院されその度に応急処置を重ねてきました。
2011年9月の再初診時は上下義歯の不具合を訴えて来院されました。この時から私が担当したのですが、患者さんのプラークコントロールは悪く、残根・カリエス・歯周病など多くの問題を抱えていました。さらに全身的にも、糖尿病・痛風・高血圧・慢性腎臓病・肝硬変などがあり内服薬も1日に10種類以上服用している状態でした。「今まで自分の好きなように生きて来た。」とは患者さんの言葉ですが、まさにそのような生活がもたらした口腔内だと感じました。歯科既往歴・全身既往歴・再初診時の口腔内状態から判断し、当時は積極的な治療は行わず応急処置で対応していこうと考えていました。しかし患者さんと話していくなかで、今回は口腔内に危機感を覚えており患者さんのモチベーションも高いことがわかり、次第に治療方針が変わっていきました。最終的には全顎に及ぶ長期間の治療となりました。まだ術後1年ですが、ご意見・ご指導をお願いいたします。
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キーワード:【患者の言葉】【補綴設計】【遊離端欠損】【自家歯牙移植】 |
歯牙を保存し補綴設計を単純なものとした1症例
北川原健一郎(13年目 TDR) |
【患者概要】
患者: 68歳 男性
初診:2009年4月28日
主訴:右上のブリッジが外れた。歯が揺れる。
歯式: 小文字は分割処理歯
特記事項:頑固 非喫煙者(過去に喫煙歴あり)糖尿病加療中
【要旨】
当院には1991年より通っていた方で主訴部位の他にも歯周病の進行が認められたため欠損が拡大する可能性も高く全顎的な治療が必要なことを説明。欠損が拡大する場合は可撤性の補綴となる可能性も説明して治療を開始した。まずは歯周基本治療により病因の除去を計り、歯肉縁上、縁下のスケーリング、SRPを施行、補綴物を除去し暫間被覆冠の装着し動揺歯の安静を計った。炎症、ポケットの残った部位には歯肉剥離掻爬術を施行。部位によっては骨欠損の形態等から判断し歯周外科手術ではなく再SRP も施行した。47 歯は骨の平坦化と補綴条件の改善のためアップライトを施行。術後歯周組織管理を行いながら暫間被覆冠を調整し、動揺歯の経過を見ながら最終補綴物の連結範囲を模索していった。下顎左側の大臼歯が欠損しており遊離端欠損を呈しているため、片咀嚼が懸念された。部分的再評価等でも上顎右側の歯牙の動揺に改善が見られないため、上顎右側の歯牙に対する負担の分散が必要と考え、欠損補綴による改善を計画した。義歯による可撤性義歯による補綴も計画したが下顎右側の大臼歯部の歯周組織の状態等から義歯の鈎歯としての負担能力は不十分と診断。固定性補綴物での左側遊離端欠損の改善を計ることとし、対合歯を喪失している48 歯近心根を分割し、左側遊離端部の7番部に90 度回転させ自家歯牙移植を実施した。尚、治療計画としてインプラントも考えたが上顎左側の大臼歯部の予後を考慮し歯根膜感覚が存在する自家歯牙移植を選択した。尚、移植歯の付着歯肉を獲得することに留意した。歯牙の切削を可及的に避けるよう考慮しながら最終補綴の連結固定範囲を模索していったこと、自家歯牙移植も経過観察に時間を要したことから最終補綴までは期間が掛かったが安定した咬合を回復できたと思われる。ご意見ご指導よろしくお願いします。
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キーワード:【臼歯部咬合支持】【自家歯牙移植】 |
自家歯牙移植による欠損歯列の改変を行った1症例
長野泰弘(14年目 救歯会) |
【要旨】
患者:67歳 男性
初診日:2007年3月
歯式:
【治療の概要】
初診は2007年3月、患者は67才の男性、主訴は右下の歯がしみる。主訴改善の後、義歯新製を希望されたため全顎的な診査に入った。ペリオの進行とリスクは少なく、カリエスと力のリスクが高いように感じた。全身疾患の既往はない。生活習慣としては、甘味嗜好が強い。退職されているが以前の職業は教師、校長まで務めている。現在も民生委員をされており、精力的に活動している。趣味はゴルフである。
恥ずかしい話だが本症例は2回の治療介入を行っている。1回目の治療は、よく噛めるようになっていただくことを目的に、コーヌスクローネとクラスプによる二次固定効果を目論んでの欠損補綴を行った。2回目の治療介入は、義歯支台歯にトラブルが生じたために、受圧加圧バランスの改善を目的に自家歯牙移植を行い、ブリッジによる一次固定での欠損補綴を行った。
【考察】
1回目の治療後のトラブルは欠損歯列の状態が悪いということや、力が強いために起こったというよりは、補綴精度の甘さに起因するということが、救歯会に入会して理解できた。2回目の治療介入時に補綴精度を向上させて、再度義歯での補綴にチャレンジするべきであったが、欠損歯列改変の効果がより高いと考え処置を行った。それを判断する根拠に乏しいことが最大の反省である。
まだ治療を終えたばかりで経過がなく恐縮ですが、ご批判ご指導頂けますと幸いですので、何卒よろしくお願い致します。
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キーワード:【欠損歯列の改変】【自家歯牙移植】【間接法】 |
歯周環境の改善を考慮した症例
市野英昭(15年目 しんせん組) |
【要旨】
患者:58歳 女性 職業:タクシーの電話当番
初診日:2008年1月
主訴:右上がぐらぐらして抜けそうで心配。右下もブラッシング時出血する。抜かないで治してほしい
歯式:
【要旨】
患者さんは、右上2番の歯が、動揺しており、今にも抜けてしまうのではないかと、心配されていました。また、ブラシング時の右下2番3番間の歯肉からの出血も、気にされていました。
左下6番 右下7番にも、歯周病由来のX線透過像が認められ、歯周治療の必要性があると考えました。
まず、患者自身によるプラークコントロールの大切さを感じてもらった後、スケーリング ルートプレーニングを行いました。深いポケットの残った右下3番 右上2番 遠心根の抜根を予定した左下6番根面が、複雑だった右下7番においては、歯周外科を行いました。
歯周治療後、補綴治療まで終了したが、右下7番舌側の複雑な根面形態から、プラークコントロールの難しさが残ってしまった。
補綴治療後、短い期間で右下7番の2次カリエスの問題が生じてしまいました。
右下7番の再治療を考える上で、歯周環境の条件を改善するために、右下7番を右下6番部に180°回転させて、移植をしました。
【まとめ】 複雑な根面を頬側にしたことで、以前よりプラークコントロールの困難さは改善されたと思われる。しかし、今後メイテナンスにおいて、注意をしていく必要があると思われます。
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キーワード:【成人性歯周炎】【プラークコントロール】【歯牙移植】 |
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