二次固定で対応した少数歯残存症例
畔柳沙織(もくあみ会) |
【症例】
初診:2010年2月 初診時歯式: 3
患者:60歳 女性 5432 12345 7
職業:専業主婦 抜歯後歯式:
主訴:噛めない 32 123
【要旨】
卒後3年目の頃に出会い、自分にとっては一冊の教科書のように、様々な事を教えて頂いた患者さんです。
初診時、上顎義歯はすぐに外れてしまうほど粘膜面は不適合で、下顎臼歯部には歯周病の進行による動揺歯が多く認められました。
まずは主訴である、ものが噛めないことに対応し、保存が厳しかった歯を抜歯、即時義歯を作製していきました。
食事は少しできるようになりましたが、支台歯となっている下顎前歯はペリオ、カリエス両面から状態はあまりよくありませんでした。
予後不安な残存歯を保存するため、また患者さんの希望も踏まえ、当時経験はほとんどありませんでしたが、下顎はコーヌステレスコープ義歯で対応していく治療計画を立案しました。
術中、自分自身が未熟がゆえ、基本治療にも不備が多く、治療期間も長くなってしまいました。
一方、治療を通して、基本治療やレントゲン、口腔内写真などの臨床記録の取り方、間接法など当時知らなかった事の多くを学びました。
【まとめ】
- 根管治療や間接法など、基本治療の反省点や大切さを知りました。
- コーヌステレスコープ義歯の清掃性の良さと、動揺歯への二次固定効果の有効性を実感しました。
- 臨床記録は自分自身へのフィードバックにもなり、経過観察の中で大切な要素の一 つである事を学びました。
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キーワード: 【MTM】 【間接法】 【二次固定効果】 |
67欠損に片側性義歯で対応した一症例
西島 泉(火曜会) |
【症例】
初診:2008年3月
主訴:右下3歯肉腫脹
職業:元大学教授
性別:男性
歯式: 765432112345
543211234567
【要旨】
本症例は初診時66歳男性で、右下3の歯肉腫脹を主訴に来院されました。
67欠損が対角に存在しており、右下5に動揺度2度を認めました。勤務医
時代に担当となりましたが、当時は欠損の捉え方に理解が乏しく、患者さん
の義歯は嫌という思いばかりに流されて補綴処置を考えておりました。何度
かインプラントや移植による欠損歯列の改変を考えましたが、既往歴や年
齢、対合歯の状態を踏まえて片側性義歯で治療の経過をみていきました。
欠損部の受圧条件は良好で加圧要素も結果的に減らすことができ、テンポ
ラリーデンチャーでの経過は良好でした。術後何度かブラキシズムの影響が
疑われ、不安を残しつつも、年齢と術後対応を考えると義歯を選択して良か
ったと感じております。
【まとめ】
- 片側性義歯を用いたことで、義歯の受け入れは良く、7までの咬合を確保したことで、咀嚼域の拡大と咬合の安定を図ることができた。
- 義歯を選択したことによって、対合歯にも優しい設計となったが、力の問題や残存歯の偏在は解決されてはおらず、今後も注意深い観察が必要である。
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キーワード: 【年齢と既往歴】 【受圧条件と加圧要素】 【片側性義歯】 |
アイヒナーB4症例にコーヌスクローネで対応した一症例
黒田昌崇(救歯会) |
【症例】
初診:平成23.4
主訴:左下が痛い
職業:主婦
性別:80歳代 女性
歯式: 321 1
21 1234
【要旨】
主訴は左下4が噛むと痛い、左下4がぐらぐらしてよく咬めないとのことで直接来院されました。左下4は、かなりの動揺がみられ、痛くて昨晩は眠れなかったということでした。義歯を外しても痛いということでした。咬合調整をして早期接触をとっていくと少しは軽減したということでしたので、手前の歯に固定をしないと義歯が使えないということでしたので、スーパーボンドで固定をしました。 すると大変お喜びになられて、昨日までの痛みはなんだったのかということを言われ、他の歯も見てください、入れ歯も気になっていたので新しくしたいのでしっかり治したい、と、おっしゃっていただきました。そして、ニコニコして帰れられました。ただ、残存歯はほとんど失活しており根管治療をしてある歯もあまり状態が良くないのと、されていないところも失活していそうなカリエスがあったりCRもひどい状態でしたので、どこまで残せるのかという不安な歯ばかりでした。上顎の歯には破折していそうなレントゲン像が認められ、上顎は全部抜いて総義歯かもしれないということも頭に入れないといけないかな?と思いました。下顎は、失活している歯がほとんどで、縁下カリエスが多く存在していました。これもどこまで残せるかということが心配されました。 歯並びもかなりの叢生が認められ、どう治そうかという感じになりました。また、年齢のこともあり80歳以上の方にどうプラークコントロールをモチベーションしようかが課題と思われました。
【まとめ】
- 患者さんのことを考えてなるべく歯を抜かないようにして治療を行ったが本当によかったのか?
- 今後欠損の流れを考えたつもりでコーヌスクローネを選択したが、果たしてよかったのか?ステップが複雑であったので進め方に問題がなかったか?
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キーワード: 【予後不安歯】 【補綴設計】 【咬合接触】 |
力の因子を考慮し咬合再構成した一症例
大八木 孝昌(歯考会)卒後18年 |
【症例】
初診:2010.10
主訴:1か月前から右下が痛くて噛めない
年齢・性別:68歳・男性
歯式: 7654321 1234567
7654321 1234 7
【要旨】
右下7番ならびに左上3番の重度歯周組織崩壊の原因として、右上2番のクロスバイト、左下臼歯部欠損の放置による左上6番の過度な挺出、下顎前歯のファセット、左右下顎頭の吸収による左右課路角の差、骨隆起など様々な力の因子が複雑に絡み歯周組織の崩壊を助長したと考えました。
治療を進めるに当たり、分岐部病変3度の右下7番、左下水平埋伏智歯の影響による左下7番遠心側の骨欠損、パーフォレーションを認めた右上6番は保存困難と判断し抜歯とした。
補綴設計を考える上で、左上3番が欠損となると上顎前歯を大きく含めた補綴処置が必要になる可能性が考えた。したがって自然移動、矯正的挺出、再生療法を行い積極的に保存を試みた。そして、左下欠損部への対応としてインプラントの埋入を行い、左右臼歯部にプロビジョナルレストレーションを装着し咬合の安定を計った。しかし、スプリントを用いて出てきた下顎位が前方位であったことと、右上2番のクロスバイトの改善と前後左右側方湾曲の是正をするために矯正治療を行った。矯正治療のち、プロビジョナルレストレーヨンにて、咬合の安定が得られたと判断し最終補綴処置へと移行しました。
【まとめ】
- 様々な力の因子によって、限局的に進行した歯周疾患患者に対して、補綴治療、インプラント治療、矯正治療を行うことによって、前後左右の均等化した咬合を与えられたと考えられる。そのことが結果として、下顎頭の骨修復へつながったと思われた。
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キーワード: 【歯周治療】 【矯正治療】 【補綴治療】 |
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