■2023年 第42回 臨床歯科を語る会概要


全体会
1.超高齢社会におけるGPの役割

担当:村井 斎田

 65歳以上の人口が9.3%(2020年)と世界で見ても最も高い高齢化率をみるわが国において、超高齢社会への対応は大きな課題となっており、歯科的対応はその中でも重要な位置づけを持っています。
 臨床歯科を語る会の特徴である経過観察を丁寧におこなっていくと、患者との付き合いは長くなり、それまで問題のなかった患者が高齢による問題を抱えるようになり、通院が困難になることもあります。今までの関わり合いとは違った対応を迫られることになり、私たちはその時に備える必要に迫られています。
 都心部とそうでない地域では状況も異なると思われますが、様々な地域の会員が集まる語る会だからこそ、今一度この問題について現状を知り、我々GPができることについて考えていきたいと思います。


2.デジタルデンティストリーの現状と課題

担当:川上 名村

 歯科臨床のデジタル化の波は診断のみならず診療の領域においても確実に広がりを見せており、その性能面は数年前と比較しても日進月歩の勢いで改善されていると聞き及びます。現状はデジタルを積極的に取り入れている先生、様子を見ながら徐々に取り入れててる先生、あるいは消極的な先生と、さまざまなのではないかと推察します。そのような先生方の発表を通して、臨床歯科を語る会でもこの「時代の流れの変化」を取り上げてみたいと思います。
 今回は特に補綴修復におけるデジタルのシステムについて、口腔内光学スキャナーやメタルフリーとなるCAD/CAMなどの進捗状況を提示しながら、従来型(アナログ)の手技や補綴装置の概念と比較して、利便性や機能や強度、経過観察、術後対応の面など様々な角度から、今後の課題も含めてディスカッションできればと考えています。また今後デジタル化が進んでも失いたくないアナログ技術やものの見方なども確認したいと思っています。
分科会
1.歯の保存のボーダーを再考する

担当:斎田 南川 三箇

 インプラントの確実性が上がる昨今、歯の保存が軽視される流れがある一方で、再生療法、マイクロエンド、マテリアルの進化など、歯の保存のためのテクニックや材料は改良され、以前にも増して歯を保存できる可能性は高まっていると言えます。
 ”歯の保存”は臨床歯科を語る会が大切にしてきた考え方の一つです。今回はそのボーダーラインについて、以前から変わらないところ、そして変わったところなどディスカッションしたいと思います。今回は一歯単位の話題(ペリオ、エンド、カリエス、破折歯など)を中心に、参加者から多くの症例を集めたいと思います。若手の先生からも歯の保存に努めた症例の発表をお願いします。
 歯の保存の成否は最後は経過観察に委ねられます。何名かのベテランの先生からは長期症例を通じてそれらに対する一つの答えを提示していただき、歯の保存のための視点、そこから得られた知見などをお話しいただきたいと思います。ご参加お待ちしております。


2.成長期の叢生における早期矯正治療を巡って

担当:三上 市川 村井

  近年、不正咬合を有するこどもが増加しているという実感を持たれている先生は多いのではないでしょうか。平成23年度の歯科疾患実態調査では、不正咬合の4割が叢生によるものというデータが出ており、この歯のサイズと顎骨の大きさの不調和の問題に対する早期矯正治療のニーズは高まりを見せています。しかしながら、呼称が「咬合誘導・咬合育成・小児矯正・予防矯正・I期治療・・・」と様々あるように、概念や開始時期、方法についても様々な意見が存在しており、患者のみならず歯科医師にとってもわかりにくくなっているという現状があります。
本企画では、議論の対象を5~10歳程度の乳歯列期~切歯交換期における叢生症例に絞り、治療の目的・診断・介入の見極め・開始時期・治療のゴールなど共通の項目から捉え、早期矯正治療を導入するきっかけや思考の整理に繋げることを目的とします。


3.どうする欠損補綴 ~攻めるべきか待つべきか それが問題だ~

担当:野地 鎌田 川上

 「欠損歯列の未来を読む。」そのプロセスは、欠損補綴を考えるうえで極めて重要であり、その読みの精度が予後に直結するといっても過言ではありません。そのため、Cummerの分類、宮地の?合三角、そしてKA367などなど、様々なツールを使った欠損歯列の現状把握と未来予測を行うことが一般的になりました。
では、欠損歯列は読めるようになったのでしょうか?
欠損補綴に迷うことはなくなったのでしょうか?
残念ながらそうはなっていません。
「ひと・くち・は」の未来予測は容易なことではなく、たとえプロビジョナルを使ったとしても、個別性や完全にその流れを読み切ることは不可能です。それでも、どこかで決断をしなければなりません。
今介入するべきなのか、それともまだなのか? 
攻めるべきか、待つべきか?
その決断に迷った症例の経過を通じて、欠損歯列の読み方、介入の時期や方法、判断の仕方について、ディスカッションをしていければと思います。
さあ、あなたならどうしますか?。
若手症例相談部屋

担当:三上

 金曜日の夜は、これからの臨床歯科を語る会を担う若手が症例相談を通して、臨床の力試しをします。今年の指南役は筒井純也先生(火曜会)です。奮ってご参加ください。
ポスター発表

担当:名村 市川

 すでに恒例となりましたポスター発表、昨年も力作揃いの発表で、大変盛り上がりました。今回も前年度に増してバラエティに富んだ、内容の濃い発表になるものと期待しております。
ベテランの先生から若手の先生まで、我こそはと思われる方、発表へのエントリーをお待ちしております。
夜の部屋
① 池田道場
担当:斎田 南川

 今回の道場主は、久しぶりに臨床歯科を語る会に参加される池田雅彦先生です。ペリオの難症例には多くの場合、”力”の問題が関わってきます。”炎症と力のコントロール”、これこそが歯周病治療の最重要項目ですが、池田先生はそれらに対して長年にわたりその対応に努められて来られました。スプリントを用いたスリープブラキシズムへのアプローチはあまりにも有名です。最近では、機能時の咀嚼力のコントロールにも池田先生オリジナルの方法で対応されています。
炎症のコントロールでは、歯周基本治療で驚くべき回復をみた症例の長期経過を披露していただく予定です。
今回、数名の先生から症例提示をお願いし、それに対して道場主である池田先生からアドバイスをいただき、さらには参考症例もいただく予定です。真の炎症と力のコントロールを目の当たりにして、明日の臨床に活かしていただければと思います。皆様のご参加お待ちしております。


②私のクリニックでの取り組み

担当:三箇 鎌田

 夜の部屋でしか語ることのできない『私のクリニックでの取り組み』を企画しました。
語る会では取り上げられる機会が少ないテーマとなっていますが、質の良い診療を行う上でクリニックの環境づくりは非常に大切です。スタッフの仕事へのモチベーションを向上させる工夫、診療を円滑に進めるためのシステム構築、患者さんに満足してもらえる診療体系などをどのように工夫しているのか、会員の先生方の発表を通じて実際にヒントやアドバイスをいただく企画です。
多くの先生から漏れ出すクリニックの経営不安、スタッフ問題、さらなる発展など様々なクリニックの問題や悩みを少しでも解決するヒントを協議したいと思います。開業前の若手歯科医師から開業後に悩まれている歯科医師まで楽しめる内容になっております。多くの方々のご参加をお待ちしております。




臨床歯科を語る会 実行委員会

斎田寛之(火曜会)
  川上清志(富山劔の会) 名村大輔(救歯会) 市川康裕(KDM) 村井裕介(しんせん組)
  野地一成(救歯会) 南川剛寛(KDM) 三上諭(無門塾) 鎌田征之(火曜会